ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆008

勢い余って家を飛び出してきたものの行く当ても無ければお金もそれ程持ち合わせていない。


ただ無気力に調布駅前のパルコの中をうろついていたが、やがて閉店の時間。


会社帰りの大人達が忙しなく行き交う駅前のロータリーで麻理子は途方に暮れていた。

素直に帰れば済む事なのだが麻理子にも、それなりに意地があった。


今回の件に関して自分に非は無いし、このまま帰ったら今後も父の言いなりにしなければならない。


気が付けば9時を過ぎていた。


《こんな時に楓叔母さんがいてくれたら・・・》


麻理子は母、香澄の妹の楓の事を思い出していた。


だがもう、その叔母を頼る事は出来ない。


その時
「カーノジョ!」
鼻にピアスをした男が麻理子に声を掛けてきた。


「どーしたのー?待ち合わせー?」
ニヤケながら近づいて来る男に麻理子は緊張した。
「それとも家出してきたのー?」
ロータリーに停めてある大きなワゴン車から出てくる男の仲間。
男は3人連れであった。
いずれも顔のあちこちや耳に大量のピアスを付け、見るからに下品で悪そうな連中である。


「え・・・あ・・・あの・・・」


麻理子は3人に囲まれてしまった。
「こんなトコに突っ立ってないでさぁ、遊びに行こうよー」
「何なら気持ちイイ事も教えてやるぜーぃ」
下品な言葉に更に下品な笑い声をあげる男達。


言いようの無い恐怖感に麻理子はただ震えていた。


「ささ、行こうぜー」
男の一人が麻理子の腕を掴む。
《イヤ、止めてください・・・》
そう言いたくても声が出ない。
更に腕を引っ張られるも強張った体で腕を引き戻す麻理子。今、麻理子に出来るささやかな抵抗であった。


「何だよーオイ!」
男達が苛立ち始めた。
「いいから来いよぉ!」


だがその時


「ごめ~~ん!待ったぁ~?」
今度は一人の女の子が声を掛けてきた。


声の方に振り返る男達。


麻理子も声の主に視線を向ける。だがその女の子に麻理子は心当りが無かった。


《だ、誰?》


それが槙村遥子との出会いであった。

つづく

コメント

  1. 大阪の永ちゃん狂い より:

    おめでとうさんです
    今年も「女達のトラベリン・バス」楽しましてもらいます
    麻里子が~って思ったら、
    なんとええとこに遙子が・・・
    おぉぉ~ドキドキが止まらん

  2. AKIRA より:

    大阪の永ちゃん狂いさん♪^^
    昨年は本当にありがとうございました
    引き続き今年もヨロシクお願いします
    今回も楽しんで頂き真に恐縮であります
    重ね重ね次回もヨロシクお願いします

  3. 恵理 より:

    【読んで見ての感想】
    人と人の出会いと矢沢ファンの人への思いやりや温かさ感じました。

  4. AKIRA改め新堂日章 より:

    恵理さん♪^^
    訪問、並びにコメントありがとうございます
    そう言って頂けると書き上げて良かったと、そして、こちらが表現したかった事を伝える事が出来たと二重で嬉しく思います
    良かったら、また遊びに来て下さいませ

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