ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆023

「その話はもういいわよ」

所変わって川崎のOpen Your Heart

昔話が話題に上った事でカウンター内の眞由美が呆れ顔で止める。

「エエやないですか。伝説ですやん」
「昔の話よ」
「私は、もっと聞きたいです」
「私も」
カウンターに居る遥子と麻理子が続きをせがむ。


「それから眞由美の姐さんは、その悪人8人をバッタバッタとなぎ倒し~」
「チョット違うでしょ!!」
漫才の様なやりとりに遥子と麻理子は愉快に笑う。


眞由美が過去に一度だけ地方のコンサートに参戦した時に何の罪も無い矢沢ファンの母子を悪の矢沢ファン(笑)から守ったとゆう話なのだが、この時のエピソードは様々な尾鰭が付いて全国の矢沢ファンに知れ渡り後にネットの掲示板にも書き込まれ眞由美の存在は、ある意味伝説になった。


そのお陰で噂を聞いた矢沢ファンが各地から眞由美の店に訪れる様になり店としては有難かったが眞由美個人としては迷惑この上なかった。


「あんたみたいなのが余計な事を言うせいで私、会った事も無い連中に和〇ア〇子みたいな女だって思われてるんだからね!」
「ピッタリですやん!正に矢沢ファンのゴ〇ド姉ちゃんですがな!!」
「あんたホント叩き出すわよ!」


遥子と麻理子は爆笑した。
遥子達の世代では『うわさのチャンネル』は知らない筈だが『ゴ〇ド姉ちゃん』の響きがツボに入った様だ。


因みに、この関西弁の男の名は水島洋助。


出身は三重だが大阪在住で例の眞由美のエピソードを現地で目の当たりにした一人である。


「ほな叩き出される前に失礼しますわ」
洋助は止まり木から降りて財布を取り出した。


「もうですか?」と遥子。時間はまだ9時過ぎであった。
「そろそろ行かないと帰りの新幹線に間に合いまへんので」


会計を済ませると洋助は入り口脇に置いてあるキャリーバッグの取っ手を伸ばした。


「いやぁ~今日は眞由美の姐さんだけでなく、こんな可愛いお嬢さんお二人とも一緒に飲めて楽しかったですわ」
「私達も楽しかったです」と遥子。麻理子も隣で大きく頷いている。


「出張ついでに立ち寄って正解でしたわ。ほな姐さん。また来ますぅ!」
「もう来なくていいわよ」勿論、本心ではない。


開店直後の客は遥子と麻理子の二人だけだったが8時頃に眞由美の知人である洋助が来店。
関西人らしいトークで初対面の遥子と麻理子を存分に笑わせて去っていった。


嵐が過ぎ去ったかのように静かになる店内。
♪ROCK YOU HIGHが流れる中で
「面白い人ですね」と麻理子。
「まぁ関西の人だからねぇ~」
眞由美は洋助が使ったグラスと皿を片付ける。


因みに眞由美が和〇ア〇子みたいな人物に思われてる事実を教えてくれたのは真純である。


あるネットの掲示板に『例の川崎の姉御は和田アキ子の様な人』とゆう書き込みを偶々見つけ読み進めると『店、行ってきた。本当にア〇コさんみたいな人だった』とゆうデマが多数書き込みされており以来、怖い者見たさ目当ての初来店の客から時々「今日はママさんはいらしてないんですか?」と聞かれ「私ですけど」と眞由美が答えると「え゛え゛っ!?」とゆうリアクションをされる。


実際の眞由美はクール・ビューティーなのだが、そうゆう話は何故か広まらない。


その時、店の扉が開きカランカランと鐘が鳴った。
「いらっしゃいませ」
「こ、こんばんは。お邪魔します」


一人の30代後半と思われる女性が入ってきた。


つづく

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