ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆025

「こうゆう事ってあるんですねぇ」
「ホント、ドラマみたい!」
「でも憶えていて下さって光栄です」
「客商売してるとね」


女の名は神園里香。


東京の大田区出身だが結婚を機に旦那の実家がある島根県に嫁ぐ。
だが昨年、離婚して息子を連れて自分の実家に戻ってきたそうだ。


「是非もう一度、改めてお礼を言いたくてインターネットで色々調べさせて頂きました」
「そんなの別にいいのに。でも来てくれてありがとう」
「いえ。お陰様であの時は本当に親子でコンサートを楽しむ事が出来ました。息子も眞由美さんの事は今でも憶えています」
「私の方こそ光栄だわ」
「だけど私の実家から、そんな遠くない所にお店があったなんて夢にも思いませんでした」
「よかったら今度、息子さんも連れていらして」
「いいんですか?息子も喜びます!」
「お酒は飲ませないけどね」


里香の息子は現在中学生。


眞由美の一言に3人が笑う。


―――8年前―――


「な、何だよお前」
「コンサートをブッ潰せるなら、やってごらんと言ったのよ」
「うっせんだよ!このアマァ!」
「だけど、それをやったらお前達は、ここにいる全員を敵に廻す事になるのよ。その覚悟があるなら、やってごらんなさい」


涼しい顔で静かな語り口調だが威圧的な迫力が存分に現れている。


「この姉さんの言う通りやな」
眞由美が立っている所に近い席に座ってる一人の男が立ち上がった。


「今日のコンサート潰す言うんならワシも黙ってへんで」


実はこの男が水島洋助であった。


「俺もだ」
「私も」
「ウチも」
「ワシもや」


次々と周囲の客が立ち上がり遂には2階席全体で永ちゃんコールならぬ帰れコールがその8人に浴びせられ、やがて異変に気付いたスタッフやガードマンが飛んできて他の客が事情を説明。
そして8人は強制退場となり口火を切った眞由美には周囲から賞賛の嵐が巻き起こった。


里香が当時の事を話し終えると


「それが事実よ。洋助の言ってた事と全然違うでしょ?」
「でもカッコいいじゃないですか!やっぱり素敵です!!」と麻理子。
「だけど、その話が事実なら洋助さんもカッコいいですね」
「まあね。あの時の洋助は男らしかったわ」
この時がキッカケで眞由美と洋助は後に交流を持つ様になった。
「さっきの面白可笑しい人と同一人物とは思えませんね」と遥子が笑う。
「え?さっき?」と里香。
「30分位前まで、今あなたが居る席に座っていたわ。今頃は品川駅の新幹線のホームね」
「凄い偶然!出来ればその方にも、お会いしたかったです!!」
「いずれ会えると思うわ。仕事で時々こっちの方に来るみたいだし」
その後4人は洋助を噂して盛り上がり10時を過ぎた辺りで里香は帰って行った。
帰り際に眞由美は昨年、麻理子に渡した物と同じ名刺を里香に渡し、受け取った里香は過剰に思える位に感激していた。


「世の中狭いですね」と麻理子。
「う~ん・・・」
「どうしたんです?」と遥子。
「何か不自然ねぇ~」
「今の人ですか?」
「うん」
里香の使ったグラスを片付ける眞由美。


「あんな昔の事でわざわざ、こっちの事を調べてお礼に来るってのが大袈裟に思えてね」
「それだけ眞由美さんに感謝してるって事じゃないですか?」
「そうですよ。私も、あの人の立場だったら、ずっと忘れないと思うし」
「ん~、てゆうかねぇ・・・」
「???」
理解出来ないとゆう表情で互いの顔を見る遥子と麻理子。


「何か他意があるってゆうか、本心を隠してるって感じに思えてね」


眞由美は里香が近日中に再び訪れる予感がした。


つづく

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