6月1日は眞由美の誕生日。
そして毎年6月の第一土曜日には『情事』こと真純が幹事となってバースデー・パーティーが開かれるのが恒例であった。
昔は眞由美の店で行われる小規模な物であったが年を追う事に参加者が増えだして店では対処しきれなくなり3年前から真純の友人がマネージャーをしている川崎駅近くのホテルの宴会場を借りて開かれる様になった。
当然パーティーにはアルコール類が提供されるので参加者には基本、公共の交通機関を使用しての来場を義務付けており、どうしても自分の車、ないし単車で来場する際には会場のホテルに宿泊する事が絶対条件とされていた。
だが毎年、参加者全体の割合では宿泊派が圧倒的に多くなるので事前に部屋を押えるのも真純の役目であった。
そして真純も宿泊組である。
今年の参加者は約60人。
麻理子と里香と永悟の新規の参加者。そして眞由美の好意で千晶も招待され今年は例年以上に賑やかになりそうなので幹事の真純は気合が入っていた。
午後4時には会場入りして料理や飲み物のプランやバースデー・ケーキの準備にテーブルのセッティング。
すべてが整った6時半頃になると本日、主役の眞由美が会場に入ってきた。
「今年も盛大ねぇ~」
自分のバースデー・パーティーなのに何処か他人事である。
「眞由美ちゃん、毎年言ってるけど、この日位はもう少しドレスアップしてきたらぁ?」と真純。
「いいじゃない。着飾ったらバイクに乗れないもの」
ライダーズジャケットにジーパンにブーツ。インナーはYAZAWAのTシャツと普段着姿の眞由美。
眞由美も宿泊組であった。
「地元なのにバイクで来るのもどうかと思うんだけどねぇ。それに主役が一番乗りなのもどうかと思うわ」
「地元だからよ。それに部屋で待ってたってしょうがないじゃない。何か始まる前の雰囲気って好きなのよね」
「その気持ちは判るわ。だから幹事は止められないのよね」
「いつもありがとね」
「いいのよ。好きでやってるんだから」
ここで拳斗が入ってきた。
「お疲れ様」と眞由美。
「また今日も、その格好か?」
拳斗も眞由美がコンサート以外で着飾った所を見た事が無い。
「そうよねぇ!拳ちゃん、もっと言ってやって!」
「キメるのはコンサートの時だけで充分でしょ。それともなあに?永ちゃんに妬いてるの?」
「ばーか」と笑う拳斗。
「こんばんは~」
遥子と麻理子が一緒に入ってきた。
「こんばんは遥子ちゃん。あらぁ~!麻理子ちゃん素敵じゃない!!」
ディープ・グリーンのミニドレスに黒のボレロを身に纏った麻理子を見て驚嘆の声を上げる眞由美。
「ホントねぇ!お人形さんみたい!!」と真純も見惚れる。
「おぉ!よく似合ってるな」と拳斗も感心している。
「パーティーだって聞いてた物だから」と照れ笑いを浮べる麻理子。
麻理子の趣味はドレスのコレクションだったりする。
それを知ってる遥子が着てくる様に薦めたのであった。
「ねぇ、9月のフォーラムにも、それ着て来なさいよ」と真純。
「いいわね!クラッシックの雰囲気にぴったりじゃない」と眞由美も頷く。
「えぇ~っ」嬉しい様な困った様な表情の麻理子。
「それでコンサート後に永ちゃんに呼び出されて口説かれちゃったりしてねぇ~」
遥子の言葉に笑いが起こる。
そこに里香が入ってきた。
「里香ちゃん、こん・・・ど、どうしたの!?」
顔面蒼白な里香を見て眞由美達は只ならぬ事態が起きてる事を察知した。
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