スニーカーに履き替える余裕まであった。
<BGMは♪逃亡者>
下駄箱に上履きを入れてる頃に4人組がドタドタと階段を下りてくる。
先頭が自分を見つけた事を確認したら永悟は正門がある南へ向かって走り出した。
「あっちに逃げやがった!」
息切れしながら上履きのまま追い駆けてくる4人組。
正門から出ると見せかけて咄嗟に右に折れた永悟。
4人組は急な行動を取られまた転びそうになる。
「てめぇ殺すぞ!待ちやがれ!!」
物騒な怒鳴り声に教室に残っていた生徒達が一斉に顔を出す。
永悟はそのまま100メートル以上ある校舎の前を一気に駆け抜け敷地内の端で立ち止まった。
「せんぱ~い。殺したかった追い着かなきゃ」
「野郎っ!!」
だが連中は殆ど余力が無かった。
その場で立ち止まり肩で息をする4人組。
「永悟!」
2階の教室のベランダから千晶が心配そうな表情で叫ぶ。
気付いた永悟が手を振る。
「おい何やってる!?」
2階の別の教室から一人の教師が怒鳴る。
「陸上部の練習で~す」
制服姿の永悟の言葉に生徒達から笑いが起こる。
「畜生ナメやがって!!」
再び走り出す4人組。
ここで永悟は拳斗から聞いた話のもう一つの行動を真似してみる事にした。
目測で自分との距離が20メートル位の地点にノロノロとやってきた4人組。
そこで永悟は逃げずに逆に連中の方に向かって全速力で走り出したのだ。
「!」
何が起こっているのか理解出来ないでいる4人組。
物凄い勢いで突進して来る永悟。その姿は中々迫力がある。
「う、わぁ~~~っ!!」
永悟の予想外の行動に4人組はパニックを起こし今度は自分達が逃げ出した。
だがそれは一瞬であった。
何故なら気が付けば永悟の方が奴等を追い抜いていたからだ。
拳斗の場合は追い着いた奴を片っ端からブチのめしていったのだが、これが永悟が考えた自分なりの『戦い方』であった。
正門まで走りきった永悟が振り返り
「せんぱ~い。追い駆けてた方が逃げてどうするんですか~」
これにまた笑いが起こる。
永悟は全く息を切らせていない。
その頃、3階のベランダで5人の3年生がその光景を見ていた。
「アイツ結構やるな」
その3年生は揃って教室から正門の方に向かいだした。
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