「あ・・・・・あ・・・・・あ・・・・」
ガタガタと大きく震えながら泣き顔で声にならない声を漏らす里香。
「落ち着いて。大丈夫よ」
里香の肩をしっかりと掴む眞由美。
「誰かお水をお願い!」
真純がホテルのスタッフに叫ぶ。
「え・・・永悟が・・・・・千晶ちゃんも・・・・・」
震える手で眞由美に携帯を差し出す里香。
眞由美が受け取り耳を澄ませ皆も集まる。
「千晶を放せ!」
微かに聞こえる永悟の声。
「千晶は関係無いだろ!放してくれ!!」
「うるせぇ!大有りだ!」
ゆっくりと永悟の方に歩いていくAとD。
「警察呼ぶぞ!」
「呼べよ!女がどうなってもいいんならよ!!」
Bに手錠を、Cにも腕を掴まれたままで身動き取れない千晶。
葵は放置されていたが恐怖心で逃げ出す事も出来ずにその場で立ち竦んでいた。
電話からだと会話は、はっきり聞き取れないが永悟が何かトラブルに巻き込まれてる事は充分理解出来た。
「は、早く警察に!」と麻理子。
「知らせて、どうするのよ?」と遥子。
「どうするって!」
「何処に急行してもらうの?」
「あ・・・」
そのやり取りを聞いて里香が声を上げた。
「六郷土手って言ってました!確か野球場とも!!」
「そ、それなら」
麻理子は携帯を取り出す。
「待って!」
眞由美がそれを止める。
警察は市民が思ってる程、直ぐには現場に駆けつけてくれない。
増して、この場合、通報する側が現場にいる訳では無いので状況説明も難しく悪戯と解釈されてしまう可能性もある。
だが電話から聞こえてくる会話から察すると一刻の猶予も無い。
「六郷土手って言ったわね。間違い無い?」
「は、はい!」
会場のワンブロック東は国道15号。通称、第一京浜。
北に向かい多摩川を越えたらそこが六郷土手である。
「私に任せな」
この時の眞由美には麻理子や里香が知ってる、いつもの優しい表情は微塵も無かった。
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