千晶の姿を見て遥子達は正三やA達に対して激しい怒りを憶えた。
拳斗が車の中から工具を取り出し千晶の手に填められた手錠のチェーンを切り離す。
その間に遥子は葵の居る方へと歩き始めた。
すると
「よーぅ、よーぅ、ネエチャンYoーっ」
正三がナイフを、ちらつかせながら遥子に近づいてくる。
「遥子さん!」
里香達に戦慄が走る。だがその時
「馬鹿な子…」
「えっ?」
麻理子の呟きに里香達が驚いていると
「でしゃばらねぇ方が身の為・・・っ痛ぇーーーーーーーーーーーー!!」
ナイフを持った手を遥子に掴まれ関節を捻られて絶叫する正三。
ナイフが落ちると同時に正三の体が一回転して宙に舞った。
ドサッ!
「ぎゃぁーーーーーっ!」
腰から地面に叩き付けられ悲鳴を上げる。
「おぉ~っ!」
その光景に驚嘆し拍手を贈る拳斗。
「遥子ちゃん、やるじゃない!」と眞由美も関心する。
ニッコリ笑って親指を立てる遥子。
これでも遥子は手加減した方であった。昔の遥子なら折ってるか頭から落としていただろう。
「な・・・何すんだよぅ!」
打ち付けた腰を手で撫でながら泣きベソをかく正三。
遥子は無視して落ちたナイフを回収し葵の方へと進む。
「畜生~憶えてろっ!!」
正三は陳腐なセリフを残して痛めた腰を庇いながら改造スクーターに乗り尻尾を巻いて逃げていく。
その余りの不甲斐無さにA達も開いた口が塞がらなかった。
「その子を放しなさい」
遥子がBとCに通告する。
さっきの見事な演舞を見てしまったからには抵抗する気など起きる筈も無い。
同じ頃に拳斗が永悟の方へと向っていった。
「大丈夫か?」
「はい!僕は何とも」
「千晶ちゃんの携帯、持ってるのはお前か?返せ!」
Aを一瞥しながら手を出す拳斗。
当然、逆らう事も出来ずに言われた通りにするA。
「茶番はこれで終わりの様ね」
眞由美が気を失って倒れてるD以外の3人を見据えながら口を開く。
「ガキのオイタにしちゃぁ度が過ぎたわね。だけど今回だけは見逃してあげる。ただし!」
眞由美は鋭い眼差しで3人を睨み付けた。
さっきの生意気な態度は何処へやら。Aも他の2人と同様に震え上がる。
「今度、私の仲間にちょっかい出したら、ただじゃ済まないからね!判った?」
「・・・・・・・」
「返事ぃ!!」
「は、はいぃぃ!!」
「よろしい。それじゃ、このボンクラ連れて、とっとと帰りなさい!」
Aは我先にと逃げ出した。BとCが延びているDを抱えて引き摺りながら土手を登って行く。
「千晶・・・ごめんね・・・・・・ごめんねぇ!」
葵はずっと泣きながら千晶に詫びていた。
「葵のせいじゃないよ」
「だって・・・だって私が・・・・・」
「葵だって被害者じゃない。もう忘れよう」
「千晶・・・・・」
二人は抱き合いながら泣き崩れた。
「でも無事で良かったわ」
眞由美がホッとため息をついた。
「あ、ありがとうございます。ありがとうございます」
ハンカチで目頭を抑えながら里香が皆に礼を言う。
「お騒がせしました」
永悟も深くお辞儀をして詫びる。
「謝る事無いわ。それに礼には及ばないわよ」と眞由美が笑う。
「さて戻りましょう。っとその前にその子を家まで送らなきゃね」
と葵を気遣う眞由美。
だが茶番はこれでは終わらなかった。
突然、けたたましい車のエンジン音と共にライトで照らされる眞由美達。
「!」
ベンツを先頭に5台の白い車がやって来た。
眞由美達の行く手を阻む様に停車する車。
「へへへへへ!もう逃げられねぇぞ!!」
さっき逃げた正三がベンツの後部座席から降りてきた。
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