ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆136

「チャイナドレス?」
「うん!一緒に買いに行こっ!」

銀座のとあるバーのテーブルでカクテルとジャーマンポテトにカミカツ、季節のフルーツ等を摘みながら談笑している遥子と麻理子。

チャイナドレスは女性のYAZAWAファンの定番コスチュームとも言えるアイテムでコンサート会場では多くの美女が色取り取りのチャイナの華を咲かせており、それに憧れる若い女性ファンも多い。

「遥子も一緒にチャイナ・デビューしようよ」
「でも今年はライヴ・ハウス・ツアーだよ。チャイナはちょっと場違いなんじゃない?」

2005年、矢沢永吉はこの年に限って大きいホール会場でのコンサートを封印。すべてライヴ・ハウスでのコンサートとゆう異例のツアーを行なった。

「うん………でも欲しくなっちゃったんだもん!」

愛美と洋助の結婚披露宴にて愛美がお色直しの時に着ていたチャイナドレスを見て麻理子も刺激されてしまった様である。

因みに現在、川崎のOpen Your Heartは、その披露宴にて大暴走したオーナーの眞由美が激しい自己嫌悪に陥っている為に臨時休業中であった。

「確かにあの時の愛美ちゃんのドレス素敵だったねぇ」
「ねぇ!でしょ!遥子も着たくなったでしょ!」
「う~ん、そうねぇ」と苦笑する遥子。

普段からオシャレな遥子であるが、ちょっと訳あってチャイナドレスは敢えて避けていた。

「ねぇ一緒に行こうよぉ」と子供の様に強請る麻理子。
「裕クンに連れていってもらいなさいよ」
「まーたソレ言う!」と膨れる。

麻理子が裕司と付き合い出してから遥子は二人の為に麻理子と逢う機会を減らすつもりだったのだが、それが返って麻理子には不満な様であった。

「私は遥子と行きたいのっ!」と駄々っ子の様な麻理子。
「判ったわよ」と言いながら両手の平で優しく麻理子のほっぺをプシュッと潰す。
「ホント?」機嫌が良くなる。
「けど来月まで待って。今はホント仕事が忙しいんだ」
「うん、判った!あっ、そうそう!それとねぇ遥子!」

麻理子はバッグの中から一冊のファッション誌を取り出しページを開いた。

「コートなんだけど、これとこれどっちがいいと思う?」

遥子以上にオシャレ大好きな麻理子であったが、それも元々は高校時代の遥子のお陰であった。

遥子は姉の影響で小学生の頃からオシャレで同年代より少し大人びたファッションを好み、またそれを上手に着こなしセンスも良かった。
反対に麻理子は堅物な父親のせいで地味な服装を強制され叔母の楓がプレゼントしてくれる服も父、孝之の検閲無しでは着させて貰えなかった。


高校生活初期のある日曜日

「駄目よ高校生がそんな地味ぃな服、着てちゃあ!」
「でも、お父さんが……」
「よし!今から買いに行こう!」
「えっ!?」

その日、新宿で一緒に映画を観る予定だったのだが遥子は急に予定変更して麻理子を連れて調布駅前のパルコに向かった。

そして、とあるティーン向けのショップで

「これなんていいんじゃない?きっと麻理子に似合うと思う!」

確かに凄く可愛い。しかし今迄に着た事が無い程に派手なデザインと色合い。スカートの丈も短い。

「でも……私には似合わな…」
「着てもいないのにどうして判るのよ?」

遥子は麻理子の手を引っ張って試着室まで誘導する。

「さあ着替えて着替えて!」
「う、うん…」
「あーもう焦れったいわねぇ!」
「えぇ!ちょっと!」

一緒に試着室に入る遥子。

「いやっ!ちょっと止めて!恥ずかしい!」
「女同士なんだから恥ずかしがる事無いでしょっ!」

強引に、しかも手際よく麻理子の服を脱がしてゆく遥子。

「ふえ~ん」
「ちょっと何よその小学生みたいな下着!」
「だって……」

当然これも父親の教育方針の影響である。

「呆れたぁ。この後は下着も買いに行くからね!」

つづく

コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました