ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆147

2月14日

「はい」

ゴディバのチョコレートを裕司に渡す麻理子。

「あぁ、ありがとう」照れながら受け取る。

昨年も貰ったが二人が正式に付き合い出してからは初のバレンタイン。

「そういえば遥子ちゃんは最近どう?」
「何だか本当に忙しいみたい……」

麻理子の表情が少し寂しげになる。

前年の沖縄以降、麻理子が遥子と逢ったのは眞由美の店で行われる恒例の新年会だけ。
その時も少しだけ顔を出して直ぐに帰ってしまった。

「身体、壊さなきゃいいけどねぇ」
「遥子の事だからそれは大丈夫だと思う」

だがそう言う麻理子も心配であった。

「明日は?」
「一応、約束はしてあるけどまたドタキャンかも……」

翌日2月15日は遥子の誕生日。

本来なら『情事』こと真純がバースデー・パーティーを計画する所だが遥子自身がそれを強く遠慮する為に仲間達はプレゼントだけ用意して、それぞれが都合の良い日に遥子に渡していた。

「それじゃ、これ、お願いしてもいいかな?」
「うん」

裕司と敏広達から預かったプレゼントを入れた紙袋が麻理子に渡される。


――――高校2年のバレンタイン・デー――――


遥子が登校して下駄箱を開けると同時にリボンにくるまれた長方形やハート型をした箱が雪崩の様に落ちてきた。

去年もあったが、その時は数個程度。だがこの年は桁が違った。

溜息を吐く遥子の横でクスクス笑う麻理子。

「今年もモテモテね」
「女にモテても嬉しくないわよ」

これ等はいわゆる友チョコとは明らかに違う物で、その殆どが下級生からの物であった。

高校時代の遥子は何故か女子受けが良く、この頃はショートヘアでボーイッシュな雰囲気だった事もあってか下級生から「お姉様♡」と慕われ親衛隊まで結成されていた。

尤も遥子はそんな後輩達にウンザリゲンナリしていたのだが。

教室に入ると引き出しの中にも隙間無くチョコが。全部出すと机の上が山の様になってしまい麻理子だけでなく他のクラスメイトからもクスクス笑われる。

そして朝のホームルームにて

「槙村さん、それどうにかならない?」と担任の先生。
「どうにかしたいのはこっちです!」

遥子の絶叫に教室内がドッと笑いに包まれる。

後程その担任が職員室から大きめの紙袋を持ってきてくれたが、それでも全部入れるとパンパンに膨れ上から溢れ出そうであった。

放課後

「ねぇ麻理子これ食べない?」
「駄目よ!遥子の為に1年生がくれたんじゃない」

両手で重そうに紙袋を持つ遥子の一歩前を軽やかに進む麻理子。

「ったく何だってこんなに重いのよ!」
「愛の重さじゃない?」
「随分、楽しそうね」
「だって遥子がそんな困った顔するの珍しいんだもん」

だが本当に重そうなので麻理子は片方の取っ手を持ってあげた。

「あぁ、ありがとう」

そんな二人を一部の下級生のグループが校門からジッと見ていた。

つづく

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