数日後、真純は突然『歪虜怒王』の復活を宣言。
復活祭を開くという事で神奈川全域の不良グループに広く呼びかけ参加者を募集。
それに伴い参加者の中から初代総長の真純が後継者を選び『歪虜怒王』を譲るとまで言い出した物だから瞬く間に話が広まり当然、眞由美達の耳にも届いた。
「何考えてるのよアイツはっ!!」
噂を聞き、怒りが収まらない眞由美。
「スミの事だ。何か考えが有るんだろう」
そう言いながらも、やはり拳斗も心配であった。
「ホントに復活なんかしたら私スミを絶対に許さないから!」
「早まるな。取り敢えずは様子を見よう」
復活を祝うつもりは無いが拳斗も眞由美と共に、その場に行く事を決めた。
そして復活祭当日
真純がその為に選んだ場所は川崎の扇島辺り。
ダダッ広い埋立地には川崎だけでなく横浜、湘南、多摩、町田辺りの族まで訪れ、ざっと見ても100人を超える人数が集まっていた。
既に所々では眼の飛ばし合い、小競り合いが繰り広げられおり、そこに一台のスズキGT750が走り込んできた。
途端に争いを止める参加者達。
群衆を切り裂く様にド真ん中を突っ切るGT750。
敷地の一番奥でターンをすると黒の革ツナギを着た真純がエンジンを切りバイクから降りた。
「みんな、よく来てくれたわね!」
誰も返事をしない。
この場に居る皆が無言のまま真澄に射る様な視線を向けてくる。
復活祭を謳っておきながら『歪虜怒王』OGでこの場に来た者は真純一人だけ。
だが此処に居る者達にとって、そんな事はどうでもよく誰が次のトップに選ばれるのか?関心はその一点だけであった。
「今日は私の後継者を決めるって事で集まって貰った訳だけど、それじゃ早速始めましょうか」
これにも誰も反応を示さない。
「ちょっとちょっと!アンタ達やる気有るの?」
腰に手をやり呆れ顔で周囲を見渡す真純。
沈黙が続く中
「で?どうやって決めんのさ?」
目の前に居るチリチリアフロで紫の特攻服を着た女が黒い唇を開いた。
「簡単よ」
真純は腰に着けていた特殊警棒を手に取り振り抜いて伸ばした。
「私と勝負しなさい」
左手に持ち変えた警棒の先端を族達に向け全員を指す様にゆっくりと廻す。
「私に勝ったら『歪虜怒王』と、このGTをあげる。勝てなかったらお前達のバイクを置いていきなさい。そして二度とバイクには乗らない事ね」
この挑発的な真純の言動に殺気立つ場の雰囲気。だが誰も具体的なリアクションを起こそうとしない。
暫く睨み合いが続くと
「バッカじゃねぇのっ!」
少し奥に居る赤い特攻服の女が叫んだ。この者は神奈川では結構名の知れたワルで真純も噂程度なら聞いていた。
「たった一人でこの人数相手に勝てるとでも思ってるのかよ?」
「タイマン張る度胸が無いなら複数相手でも私は構わないわよ」
「……ナメてんのかよコラァ!!」
足早に近づいてくる赤特攻服。
「トップバッターが決まった様ね」
その女は真純の目の前にまで来ると持っていた木刀を振りかぶり真純目掛けて一気に振り下ろした。
だが真純は半身で簡単に、その木刀を躱すと同時に右の掌底を相手の顔面に押し込む。
ガゴッ!!
鈍い音が響くと共に鼻血を撒き散らしながら後ろに倒れる赤特攻服。
そのまま後頭部を強打し白目を向いたままピクリとも動かなくなる。
前歯が折れ潰れた鼻から夥しい血液が溢れ出るその光景に場の空気が凍り付いた。
「ゴングは鳴ったわよ。次は誰?」
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