拳斗と眞由美を乗せたZ2が扇島の入口に差し掛かろうとした時
「な、なんだ!?」
進行方向から無数のバイクに乗った集団が物凄いスピードで迫って来た。
キキーーーーーッ!!
慌てて急ブレーキをかける拳斗。後輪を滑らせながら体勢を寝かせ、何とか転倒は免れる。
すると、その集団は拳斗達の横を一目散に通り過ぎて行く。
それを呆然と目で追う眞由美と拳斗。
「今のって…」
「…だよな?」
再び走り出すZ2
そこから、ものの数分で復活祭の場所に到着。
だが、そこには人影が殆ど無く、はっきりと見えるのは両手に何かを持った一人の女の姿だけであった。
その女が眞由美と拳斗に気付く。
「あら!いらっしゃい」
真純であった。
真純は左手に持っていた木刀を放り投げ右手の特殊警棒を縮める。
その足元には十数人の色違いの特攻服を着た女が倒れていた。
チェーンやメリケンサック、鉄パイプ等の武器を持ったまま血だらけで倒れ、呻き声、泣き声をあげている女達とは対照的に真純は全くの無傷の様子。
「ちょっとぉ!」
その光景を見渡しながら眞由美が口を開く。
「(サンライズの)奥さん知ったら怒るわよぉ!」
「勘違いしないでよ!これは喧嘩じゃないわ!オーディションよ!」
「そういう事か」
拳斗が思わず笑う。
「残念ながら全員不合格!他はみんな逃げちゃったしねぇ」
言うまでも無いが先程、拳斗達がすれ違ったバイクは皆、此処から逃げ帰った連中であった。
徒党を組んで一人前。いきがってはいるが一人じゃロクに喧嘩も出来ない連中。リーダー格が次々に倒される所を目の当たりにして怖くなり一人が逃げ出すと後は集団心理で残りの奴等もそれに続いて去っていったのだ。
「これじゃ歪虜怒王の存続は不可能!やっぱり解散するしかないわね」
「残念ねぇ」
「折角の復活祭だったのにな」
同時に笑う3人。
そこに新たなバイクの集団がやってきた。数にして30台以上。だがそれ等は歪虜怒王のOGフルメンバーであった。
「来るなと言ったでしょう!」と真純が叫ぶ。
「すみません!でもやっぱり……」
真純は今回の復活祭に元メンバーは絶対に来ない様にと、きつく言っておいた。勿論それは後輩を騒動に巻き込まない為であった。
「あの………真純さん」
「何よ?」
後輩の一人が前に出てくる。
「今迄……お疲れ様でした!」と花束を差し出した。
「お疲れ様でしたっ!!」
他の者達が全員お辞儀をする。
ポカンとする真純。
「な、何なの一体?」
後輩達も真純が本気で歪虜怒王を復活させる気が無い事くらいは判っていた。
元はと言えば自分達が真純に憧れ勝手に集まって出来たのが『歪虜怒王』
真純を持ち上げリーダーに成って貰いチームを盛り上げようと思っていただけなのに結果的にその真純に多大な迷惑をかけ、それでも真純は何も言わず全ての責任を一人で負ってくれた。
「その…何て言うか……私達、真純さんにいつも頼りっぱなしで………それで凄い迷惑かけちゃって……」
「だけどいつまでも、こんなんじゃいけないと思って、それで……」
全く纏まりの無い言葉だが後輩達の真純に対する気持ちはよく表れていた。
「『卒業』って事だろ。今日を区切りに歪虜怒王を卒業してもらうという。解散じゃ何だか寂しいからな」
「それでアンタ達もスミから卒業って感じかしらね」
「そ、そうです!!」
拳斗と眞由美が代弁してくれた。
「バカねぇ」と真純。
「受け取れよ」
拳斗に促され花束を受け取る。
それを見て拍手をし始める後輩達。
だがその直後に皆、一斉に泣き出してしまい自然と真純の目も潤んできた。
「鬼の目にも涙ねぇ」
「眞由美ちゃんに言われたくないわよ」
「いい後輩を持ったな。スミ」
「本当ね」
目尻を拭う。
「よーし!なら今日は歪虜怒王のラスト・ランよ!泣いても笑っても今夜が最後!みんな付いてらっしゃい!!」
「はいっ!!」
「今夜だけは俺達も混ぜてもらおうか」
「歪虜怒王は男子禁制なんだけどねぇ。でも拳ちゃんならいいわ!」
バイクに跨りエンジンをかける。
「判ってるとは思うけど暴走行為は禁止だからね!私達はツーリング・チームなんだから!交通ルールを守って楽しく走りましょう!」
「はい!」
外見上はとてもそんな模範的なチームに見えないので思わず苦笑してしまう拳斗。
「拳ちゃん、なーにが可笑しいのよ?」
「何でもないさ。で、ルートは?」
「それは風に聞いて!」
颯爽と走り出す真純。拳斗が眞由美を後ろに乗せたZ2で追い後輩達もそれに続く。
そして、その日を最後に真純はバイクを降り二度と乗る事は無かった。
コメント
真純、カッコええなぁ
大阪の永ちゃん狂いさん♪^^毎度です
正直、真純とゆうキャラがこれ程出番が多くなるとは自分も予想してませんでした
またヨロシクお願いします