ネット小説☆女達のトラベリン・バス☆237

ソロを吹き終え、ゆっくりマウスピースから口を離すと目前から突風とも思える様な物凄い歓声と拍手が華音を襲った。

ビックリしてステージ上から客席の方を見る華音。

それ等全てが自分に対して向けられているという事を自覚出来ずに戸惑っているとヴォーカルの裕司が歌いながら自分の方を向いて親指を立てている姿が目に入る。

思わず裕司に対して屈託の無い笑顔を浮かべてしまう華音。

一方で顧問の琴音も満足気な表情のまま何度も頷き拍手を贈ってくれていた。

「やったね華音!」
「凄いジャン!カッコよかったよ!!」

曲の途中であるにも関わらず友香や周囲に居る仲間達が自分を讃えてくれる。
ただ、そのせいでエンディングのソロに入るのを忘れてしまい慌てて演奏に戻って笑いを誘う事になるも、これはご愛嬌。

曲が終わると再びのスタンディングオベーション。観客だけでなくYASHIMAのメンバーに琴音達もステージ上から華音に惜しみない拍手を贈る。自身に向けられた称賛に、はにかみながらペコペコお辞儀をしていると

「華音!かのーん!!」

と自分の名を叫ぶ父親の声が聞こえてきた。

両親、揃って観に来てくれたのはいいのだが、愛娘の頑張りに感動して興奮しっぱなしの父親。妻が静止するもお構いなしに感情を爆発させている、その姿に周囲からは「お父さん最高!!」と笑いが起こり、そんな父親に対して華音は益々心象を悪くするのであった。


華音の名演で最高潮に達した第2部も佳境に入り、続く♪レイニー・ウェイ♪Rolling Nightで観客のヴォルテージは更に更にと天井知らずで盛り上がり本編、最後の曲♪真夜中のロックンロールではYASHIMAのメンバーに清純、琴音達もオーディエンスに負けない程に盛り上がってエンディングではリハとは全然違うインスピレーション、アドリブ大会となってしまい、その音の大洪水が益々、観客を沸き上がらせ、とてつもないパフォーマンスに会場全体が熱狂。

凄まじい演奏と聴衆の、これまた凄まじい盛り上がりで第2部が終了。

ステージ中央に集まるYASHIMAと琴音。そして敏広が吹奏楽部の面々にも前に出てくる様に手招きをする。

敏広が白マイクスタンドを手に取り

「繰り返しになりますが皆さん今日は本当にありがとうございました!帰りに最高に美味いビール飲んで帰って下さいヨロシクッ!!」

大盛り上りのオーディエンス。ここで敏広がメンバー紹介を始める。

「ギター、矢野賢治。キーボード、矢野加奈子。ヴォーカル、汐崎裕司」
「ベース・ギター、松岡敏広」と裕司。

「そして今回、強力な助っ人が本当に俺達を助けてくれました!ドラムス!吉岡清純!!」

2階席から物凄い拍手と歓声が鳴り響く。

その中、ステージ上でオーディエンスに応えながらYASHIMAの面々と握手を交わす清純。

「それから俺達の後輩、鷺沼平高校吹奏楽部!彼等と顧問の雨宮琴音先生にも盛大な拍手をお願いします!!」

惜しみない拍手が贈られる中、ジャケットを羽織り脱ぎ捨てたシャツを手に持った琴音が姿勢を正して丁寧にお辞儀をすると部員達も、それに倣って一緒に礼をし始める。

その賞賛の嵐に琴音は可愛い教え子達を心の底から誇らしく思い、部員達も胸を張ってそれに応え、中でも華音は感極まって涙をポロポロと流していた。

興奮冷めやらぬホール内。

そしてアンコールでは♪止まらないHa~Ha♪ファンキー・モンキー・ベイビー♪トラベリン・バスの3曲で締め括られる予定だったのだが、オーディエンスの更なる要求にYASHIMAは予定には無かった♪アイ・ラヴ・ユー,OKと♪ルイジアンナの2曲でWアンコールに応え宣言通りYAZAWA魂を爆発させて、この日、訪れた全ての者達をノック・アウトさせる事に成功したのであった。


つづく

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