予想外の再会を懐かしんだ後、外に出ると賢治、加奈子夫妻が既に他の仲間達との待ち合わせ場所であるレストハウス前に着ていた。
「やっぱ売切れてたよ」
「もっと早くに来なくちゃ駄目ねぇ」
目当てであった会場限定グッズを購入出来なかった事にちょっとガッカリと肩を落としている賢治と加奈子。
そこに先程まで喫茶武道にて他の顔見知りとお茶をしていた真純が合流。
「わぁ!情事さんカッコいいっ!」
黒地に鳳凰柄のロングドレスを着た真純に麻理子も見惚れてしまう。
「麻理子ちゃんも相変わらず素敵じゃない」
さり気なくお腹の前を両手を組んで隠す麻理子。
「あら加奈子ちゃん、ミニだなんて大胆ねぇ」
「キャッ!」
真純にコートを捲られ内股で屈んで両手で太腿辺りをガードする加奈子。
「あら早いわね」
眞由美と拳斗の二人も到着。
いつもなら白スーツで参戦する眞由美も今日は赤地に龍柄ドレスを着ていた。
「眞由美さん素敵……」
「やっぱり眞由美ちゃん似合ってるじゃない」
「ちょっと恥ずかしいのよねぇ」
実は眞由美は、これが初チャイナであった。
柄にも無く照れて拳斗の大きな身体の後ろへと隠れようとする。
今日はチャイナ・デーにしようという真純の呼び掛けに応じた女性陣。
そこに今度は洋助、愛美夫妻が加わる。
洋助は何故かブルース・リーを彷彿させる黒いカンフー服。愛美はチャイナでは無く純白のアオザイを着ていた。
「愛美ちゃんはホント何着ても似合うわよねぇ」
真純に褒められ得意気にモデルの様な振る舞いで様々なポーズを取る愛美。
アオザイは本来YAZAWAとは無関係なのだが女性YAZAWAファンの中にはアオザイ愛好家も以外と多い。
「ズルいわねぇ!自分だけ目立とうとして!」
「ママ、よく似合ってるわよ」
「娘の分際で生意気な口きくなっ!」
「それはそうと洋助、お前カンフーの大会にでも出るつもりか?」
「武道館だけに?」
「アチョーーーーッ!!」
ブルース・リーのマネをする洋助。
カンフーでは無いが空手の経験が有るので洋助の型はかなり様に成っている。
そこに一人の女性が眞由美と愛美に声をかけてきた。
「あら!久しぶり!!」
麻理子達は初対面であったが何度か眞由美の店に訪れた事のある人物で拳斗と真純とも顔見知りであった。
また、この女性は何と和装で実に鯔背で格好良いのだ。
真純とは、また違う男前な雰囲気で先程もレストハウス内にて何人もの人から写真撮影を求められていたのを麻理子も気付いていたのだが、眞由美達とも馴染みだとは思わなかった。
折角なので麻理子達も写メを撮らせて貰う。
紫の着物に銀色の帯、衿下に漢字で入れられた【矢沢永吉】の刺繍が何とも粋である。
一般的には男臭いと思われている矢沢永吉のコンサートも実際には、この様に多くの女性達が思い思いのファッションで華やかな彩りを加えてくれている。
だが一方で違う意味での究極な男臭さを発揮する者達も居る。
和服美人が、その場を去ると周囲が何やらざわめきだした。
田安門の方から有る集団が、こちらの方に進んでくるのが判る。
いわゆるモーゼの十戒の如く広がってその集団に道を譲る周囲の者達。会場スタッフも、その集団が醸し出す雰囲気に言葉を失っている。
剛健と、そのグループであった。
先頭を歩く剛健はパンチパーマに夜だというのにサングラス。ピン・ストライプのスーツに白いフサフサコート。金のロレックスに指輪ジャラジャラ。エナメル素材のヨーロピアン・シューズと誰がどう見ても【その筋の人】としか思えないその風貌。後ろに続く者達も皆、同じ様な身なりで、その威圧感はシャレにならない程に廻りをドン引きさせていた。
剛健が車道からレスト・ハウスの方へと右に折れると後ろの集団もゾロゾロとそれに続く。
そこに
「お客様、周囲を威圧する様な服装と振る舞いは御遠慮願います」
その声を聞いた途端、剛健は反射的とも言える素早さで直立不動の姿勢に入った。
「拳斗兄ィ!いつもお世話になっております!!」
「オオッスゥ!!」
揃って拳斗に深々とお辞儀をする剛健と、その仲間達。
「止めんか!貴様等と同類に思われる!!」
拳斗の懸念は現実となり、その光景を観ていた周囲の者達は拳斗の事を何処かの名高い大親分かと思ってしまうのであった。
コメント
女トラが終わりに近づくのは、嬉しくないのだけれど・・
笑いながら読んじゃいました。いろんな人の顔が思い浮かぶ・・・(笑)
アオザイ好きな彼女は・・・私も仲良しの彼女かな~
雰囲気がイキイキと…素晴らしくかっこよく描き出されて、
作者さんのペンは・・・キボードですよね(笑)・・・
魔法のようですね
BAYBREEZEさん♪^^いつも有難うございます
http://s.maho.jp/homepage/6ba89ec2cff34907/
また勿体無いお言葉も恐縮であります
第1話冒頭にも書きました通り、この女トラはBAYBREEZEさんの様な方々の物語ですので読んで下さる方ご本人、また、その御仲間の皆様の事をイメージしながら読まれますと、より一層楽しんで頂けると思います
次回は更に馴染みのキャラが出てきますので最後までゆっくり楽しんで下さいヨロシクです